「知られざる“セクハラ”」を特集した10月15日放送の『あさイチ』（NHK）で、有働由美子アナウンサーに対するスタッフの“いじり”に苦言を呈し、ネット上で「男前すぎる」と評価を上げたV6の井ノ原快彦。


40代未婚の有働アナは、これまで番組内で結婚ネタや妙齢女性の問題に話題が及ぶと、視聴者やスタッフからイジられ、それを逆手にとって切り返すというのがパターン化していました。しかし井ノ原は、「この番組でも思うことはありますよ。縁結びの神様のテーマがあったら、（スタッフは）必ず有働さんに持っていく。有働さんは『ラッキー！』って感じだけど、その全てが有働さんに対していいってわけじゃない。それで笑い取れると思ったら大間違いだぞって思う」と番組のスタンスに一石を投じるとともに、番組を見て「加害者」になる人が出てくる危険性についても注意を喚起。当の有働アナは被害者意識はなかったそうで、「私も隣で、うっと泣いておりましたけど……」と冗談めかしながらも、目を潤ませるような場面も見られました。

番組開始から4年半。「セックスレス」や「産後クライシス」、「子どもの“性”」特集など朝8時台とは思わぬ際どい内容でさまざまな物議を醸してきた同番組ですが、 それでも視聴者の支持を得ている要因のひとつは井ノ原と有働アナの掛け合い。そんな2人の信頼関係は、10月30日に発売された有働アナ初の著書『ウドウロク』（新潮社）にも垣間見られました。

番組スタート前に“アイドル”と一緒の司会を打診された際には、段取りやコメント、失言した際のフォローなどを思って「こりゃえらいことになったわ」と途方に暮れたという有働アナ。しかし、「今や、私の方が失言する。私の方が機嫌を取ってもらっている。私の言葉足らずを、いのっちがフォローしてくれる」とそれが杞憂に終わったと吐露。それどころか、「他人への思いやりが半端ではない」と井ノ原を評し、それを物語るエピソードもつづられています。

それは、『あさイチ』放送前のリハーサルでのこと。東日本大震災で全村避難となった福島県飯舘村のレポートを担当したディレクターが、放送直前になって井ノ原に趣旨を説明し、「最後のまとめとして、被災地のことを忘れずにいようということを言ってほしいのですが」と打診。すると、普段はスタッフの忙しさを理解した上で、進行の意図も十分に汲むという井ノ原が少し声を荒らげたのだそう。

「どうして、こんな大事なことをもっと早く打ち合わせにこないのか。それらしいことを言ってくれ、というだけで済む話じゃないでしょう。（略）取材したあなたにとっても、大切な取材相手でしょう。テーマでしょう」

いまだに被災地に傷跡を残す東日本大震災は、井ノ原にとっても決して軽く扱えないテーマだったのでしょう。そして、取材したディレクター自身も同じ思いを抱えていると理解しているからこそ、珍しく感情を露わにしたのではないでしょうか。

しかも苦言だけで終わらないのが、「他人への思いやりが半端ではない」井ノ原。飯館村のレポートにも誠実に言葉を選んでコメントし放送を終えると、ドラマ撮影のためにすぐに移動という時間のない中でも、例のディレクターへメモを残していったそうです。そこに描かれていたのは、ディレクターの似顔絵。通常ならば、なにかメッセージを残しそうなものですが、井ノ原はディレクターの人柄を考え、「気にするなとか、気にしてないよ、などという微妙なフォローの言葉でかえって相手に気遣わせるのではなく、ただただ愛情だけを伝えたのだ」と有働アナは分析しています。

『あさイチ』でも時折披露していますが、井ノ原のイラストといえば、ファンの間でも「ほっこりと狂気が同居している」と言われる独特の路線。技巧的ではないからこそ、例のディレクターにもその思いが伝わったのかもしれません。

前述のセクハラに関する発言でも一貫していますが、井ノ原の視点というのは常にフラットで温かみに満ちています。だからといって、決して優等生的に肩苦しくならいないのが魅力。これまでも、有働アナに進行が達者と褒められれば「なに言ってんですか！　姐さんがいないと、オレはなにも出来ないんだよ！」と照れ隠しをしたり、ヘアアレンジを変えた有働アナを「今日だけじゃなくて、いつもかわいいよ！　マジかわいいいから！」とニヤニヤ顔で褒めたりと、茶目っけたっぷりの表情を見せることも。

有働アナは井ノ原に絶大な信頼を寄せられていますが、井ノ原の発言を見ても有働アナへの信頼と愛情が同じぐらい伝わってきます。5年目を迎えた『あさイチ』で2人が今後どんな名トーク・名場面を生み出していくのか、楽しみに視聴したいですね。