坂本とこはぜ屋の関係もこれまでかと思われたが、思わぬ場面でかっこよく再登場をはたした。その日こはぜ屋の面々は、陸王のPRのためにエントリーした市民駅伝のスタート地点に集まっていた。だが、スタート直前になって出走予定者の1人にケガが見つかり、宮沢はやむなく棄権を判断する。そこに聞こえてきたのは、「ボクに走らせてもらえませんか」という聞き覚えのある声。一同が振り返ると、ネクタイ姿の坂本がそこに立っていた。あんなにひどいことを言われたのに、まったくそれを意に介さずにさらりと助けの手を差し伸べるところがすばらしい。まさに、こはぜ屋にとっては“救いの神”のような存在といえるだろう。
ところが、いざ走り始めた坂本はとんでもないヘンテコなフォーム。確かに「走るのは得意ではありませんが……」とことわってはいたが、見たこともないような珍妙な走りを披露した。救いの神に見えたが走るのは下手くそだった、というギャグ的なオチかと思われたが、ここにもいい話が隠されていた。坂本は、こはぜ屋がシューズを作ると決めた時から、何か役に立つかもしれないからとさまざまなメーカーの靴を履いて走っていたのだ。坂本から「走り方を教えてほしい」と頼まれた陸王開発を手伝っているトラック運転手・江幡晃平(天野義久)だけが、それを知っていた。そんな経緯を知っている江幡から見れば、坂本の走りは「あれでもだいぶマシになった」のだという。そんな秘話を聞き、涙を流さんばかりに感動するこはぜ屋の面々。結局入賞は叶わなかったが、この一件を通してこはぜ屋と坂本は和解。「オレは坂本さんにひどいこと言っちまったから……」と頭を下げる宮沢に、坂本は「いいんです。こはぜ屋を思えばこそだってわかってますから」と大人の態度を示した。前回はあまりいいところがなく、視聴者の印象をグッと下げてしまった観がある坂本が、うってかわって今回は印象を“爆上げ”。「やっぱり坂本はいい人だったんだ」とファンを安心させてくれたようだ。
坂本の真意を理解した宮沢は、こはぜ屋の買収を望む世界的アウトドア用品メーカー「フェリックス」の御園丈治社長(松岡修造)との面談に臨む。御園が提示した条件はこはぜ屋にとって望ましいものであり、宮沢も「前向きに話を進めたい」と答えた。ようやくこはぜ屋も窮地を脱すると思いたいところだが、宮沢を見送った後に御園が浮かべた不敵な笑みと、「もう一押しだな」とのつぶやきが気になる。もし御園に悪意があるとすれば、この話を宮沢に紹介した坂本の立場も再び微妙になってしまう。陸王の開発は坂本の一言から始まっただけに、彼には最後までこはぜ屋の味方でいてもらいたいし、陸王の完成を見届けてほしい。残り2話で買収話がどう決着するのか、今後のストーリーに期待したい。
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