シルクレイの完成という大きな難関を突破した喜びに満ちあふれた空気の中、飯山の妻・素子(キムラ緑子)は「良かったわね、あなた。うちの会社はこんなふうに仲間がいる感じじゃなかったもんね」と夫をねぎらった。「こんなクセ者の社員がいたら大変だよ。おまけに食わしていかなきゃいけないんだぞ」と冗談交じりに答える飯山。ここですかさず口をはさんだ坂本は、飯山をまっすぐに見て「だからこそ宮沢社長は頑張っているんです。陸王を10年後の飯の種にするために」と諭すように話す。その表情はうれしそうでもあり、誇らしげにも見える。こはぜ屋の担当を外れてしまった今となっては、こはぜ屋を応援したところで坂本自身には何のメリットもない。だが、坂本の表情と言葉からは、商売を抜きにして心の底から“宮沢の夢の実現”を叶えてあげたいとの熱い思いがあふれているようだ。
だが、盛り上がった空気は経理担当・富島玄三(志賀廣太郎)が発した、「1日も早く利益を生み出さないと会社が持ちません」との発言で凍り付いてしまう。隣でビールグラスに口をつけていた坂本も、思わず「今をそれを言う?」とでも言いたげな驚いた表情に。口達者な縫製課のリーダー・正岡あけみ(阿川佐和子)は、「盛り上がっている場なのに水を差すんじゃないよ」と富島をチクリ。富島も黙っておらず、「じゃ半年後に給料が払えなくなっても文句言うなよ」と反論。作り笑顔を保っていた坂本も、さすがにこの発言には顔をこわばらせ横目でチラリと富島を見た。
坂本にしてみれば、こはぜ屋が資金面の心配をしなければならないのも、もとをただせば銀行が融資しなかったせいだ、という負い目を感じずにはいられなかったことだろう。“自身が銀行員として力不足だったせいで、無用な言い争いが生じてしまった……”と責任を感じていたのかもしれない。坂本の登場シーンはこの居酒屋でのワンシーンのみで台詞も短かったが、どんな心情で「チーム陸王」に加わっているかがよく描かれていたといえる。風間も奇をてらわないまっすぐな演技で役にぶつかり、生真面目で責任感が強く、情に厚い「坂本」という人物を生き生きと表現していた。
さて、4話でストーリーは大きく進み、カリスマシューフィッターの村野尊彦(市川右團次)は世界的シューズメーカーのアトランティスを去り、こはぜ屋で陸王開発に携わることに。ケガからの再起を図るマラソンランナーの茂木裕人(竹内涼真)が、こはぜ屋のサポート選手となることも決まった。とんとん拍子に進んでいるように見えるが、それにともなって資金面の問題は今後必ず浮上するはず。坂本が救世主として、こはぜ屋のピンチを救うような日はいったい来るのだろうか。今後の展開にも注目が集まる。
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