「社長から一言お願いします」とこはぜ屋の従業員・正岡あけみ(阿川佐和子)に振られた宮沢は、開口一番「坂本さんから新規事業の話を持ち掛けられたのがつい昨日のことのようだ」と語った。陸王を開発する過程では、スポーツ用品店を経営する有村融(光石研)やソール素材の特許を持つ飯山晴之(寺尾聰)、シューフィッターの村野尊彦(市川右團次)など、知識や技術を惜しみなく提供してくれる外部からの協力者が次々に現れた。社員も夜遅くまで試作品の縫製に携わり、体力的に厳しい中を何とか乗り切った。だが、もとをたどれば坂本が「会社発展のために」と新規事業を勧めなければ、陸王が誕生することはなかった。だからこそ、宮沢も陸王開発に携わった仲間の前であらためてその功績をたたえたに違いない。坂本もその瞬間、心からうれしそうな顔を浮かべた。
残念ながら第6話で坂本が登場したのはこのワンシーンのみで、台詞も乾杯の音頭を取った一言のみ。陸王開発に際して坂本が果たした役割が決して忘れられていないことがわかった点では良いシーンだったが、少々物足りないのも事実。これで、4話以降3話連続で坂本はこはぜ屋関係者の飲み会の席でしか登場しておらず、出演シーンがワンパターン化しているようにも見える。
また、こはぜ屋に好意的でなかった坂本の後任の融資担当・大橋浩(馬場徹)がこはぜ屋を認めるようになったことで、劇中における銀行員としての坂本の役割も薄れてきている。第6話でも、陸王にアッパー素材を供給する企業が他社に契約を切り替えようとしているとの情報をいち早く宮沢に知らせたのは大橋だった。だが、陸王開発の最大の功労者とも言える坂本がこのまま日の目を見ないのはあまりにも寂しい。大橋が坂本を行田支店に呼び戻してくれれば、あの熱血銀行マンぶりを再び目にすることができるのだが、果たしてそんな日は来るのだろうか。
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